海外への渡航には様々な入国や滞在要件を満たさなければなりません。その要件は、書類の提出や電子申請、予防接種、入国ルートや海外旅行保険の指定等多岐にわたります。実際に調べ始めるとあまりの条件の多さに心が折れてしまった方もいるのではないでしょうか。
特に出張手配では、社員の安全管理という面でも正確な情報収集が重要です。
出入国情報とは一体何を調べたらよいのか、どこをどうやって探せばよいのかすら分からないという方も多いと思います。本コラムでは、出入国情報として確認すべき情報と収集における注意点等を解説します。
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出入国情報は必要になるタイミングで分けると、大きく4つに分類されます。
ビザ(査証)とは、渡航国の入国前に申請し、審査を経て発行される「入国許可証」です。
ビザは入国目的や滞在条件によって、申請すべきビザの種類が変わります。日本国籍の場合、観光目的であれば無査証で入国可能な国数は世界一位(※)ですが、業務目的の場合は商用ビザや長期滞在に対応したビザの申請が必要になることもあります。
また、コロナ禍や情勢不安によってビザの申請要件が急遽強化されることもあるため、最新の要件を確認しましょう。申請には通常より時間を要したり、ビザ申請に必要な書類を用意しなければなりません。
(※)出典:Henley Passport Index
【海外出張のいろは/準備編】ビザ(査証)の取得について知りたい方はこちらをご覧ください。
パスポートには有効期間があります。一般旅券の場合は、5年用か10年用を取得します。
渡航国によって、入国日から3~6ヵ月以上の有効期間の余裕がないと入国不可としている場合があります。前触れなしに有効期間の設定が変更されることもあるため、失効まで1年を切ったパスポートは更新することをおすすめします。
【海外出張のいろは/準備編】パスポート(旅券)の取得について知りたい方はこちらをご覧ください。
感染症流行地域では、予防接種が義務付けられている場合があります。入国の何日前までに接種する必要があるのか、接種証明書の形式や出張中の証明書携帯が指定されているのかを確認しましょう。
日本でメジャーではない予防接種の場合、ワクチン接種を受付けているクリニックが限られます。接種日や人数も制限され、希望日の接種予約が難しいこともあるので早めに調べましょう。
海外旅行保険の付保が義務付けられている国があります。加入していれば何でも良いわけではなく、補償内容や保険金額を満たしている必要があります。
新型コロナウイルスに対応しているかどうか、救援費用は十分かなど補償内容を確認するとともに、保険事故が発生した際の連絡先を確認しておきましょう。
ビザとは別に入国時に提示する書類を求められることがあります。特に新型コロナウイルスの流行以降は、PCR検査や抗原検査による陰性証明書やワクチン接種証明書といった、これまで提示義務がなかった証明書の用意が必要なケースがあります。
新型コロナウイルスをはじめとする感染症流行地域では、入国時から一定の隔離期間やPCR検査を求められることがあります。
また、滞在中の連絡先の提示やアプリ等による健康状態の報告が義務付けられていることもあります。
滞在ホテルや交通手段を指定されていることがあります。また、宿泊施設を予約する際に、旅行会社や予約システムを指定されている可能性もあります。
滞在許可証等の特定の書類の携帯を義務付けられている場合があります。携行していない場合、処罰の対象になる可能性もあるので気を付けましょう。
感染症流行地域からの帰国時に指定ホテルでの隔離や検査、帰宅時の交通手段を指定されていることがあります。自身の健康管理だけでなく、周囲の人への二次感染を防ぐためにも申告を怠らないようにしましょう。
参考:新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省
国家同士の関係や情勢、感染症の流行によって、入国ルートが指定されていることがあります。空港から出ていなくても、国によっては乗継も入国扱いとなります。乗継のためにビザ取得が必要になったり、最悪の場合は入国拒否になることがあるため、空路、陸路、海路を問わず、入国ルートの手配には細心の注意を払いましょう。
出入国情報の収集において、気を付けておきたいポイントは次の3点です。
海外出張が決まりそうであれば、渡航日程が決まる前に情報の収集に取り掛かりましょう。
出入国には様々な書類や検査、チケットの手配が必要となり、それらの用意には多大な時間がかかります。
渡航日を先に決めてしまうと、諸々の準備が間に合わない事態にも陥りかねません。早めに行動を開始しましょう。
出入国に関する情報は日々更新されていきます。国によっては、事前通告なしに即日適用ということもあるため、常に最新の情報を確認しましょう。
特にコロナ禍においては、感染状況に応じて都市封鎖や隔離などの要件が変わりやすくなっています。入国や滞在中だけでなく、日本への帰国時も条件が変わっている可能性もあるため、帰国するまで情報の収集に努めましょう。
出入国に関する情報はネット上に溢れています。その情報は信用に値するものかどうかを意識しましょう。
情報源が、外務省や大使館等の公的機関や渡航先の政府機関、利用予定の航空会社や空港であると安心です。
ここからは出入国情報の出典先を紹介していきます。
出入国を担う公的機関の情報は最も信頼できると言えます。最近では、駐日大使館のウェブサイトから電子ビザの申請やビザの面接予約が出来ることも増えました。
外務省や厚生労働省、各国の大使館や領事館のウェブサイトは必ず確認しましょう。
ウェブサイトは渡航先の言語表記の場合が多く分かりにくさを感じますが、可能な限り確認しましょう。駐日大使館が同じ情報を発信している場合もありますが、更新が遅れたり、情報量では劣ってしまうことがあります。大使館と合わせて渡航先の外務省や保健省に相当する政府機関のウェブサイトを確認しましょう。
また、アメリカや中国では州や省単位で入国や滞在要件が異なる場合があります。国単位ではなく、地域レベルでの情報収集も必要です。
航空会社や国際空港のウェブサイトでも出入国情報の発信が行われています。上述の公的機関と違い、空港での搭乗の流れやラウンジ利用についても説明されています。当日、慌てなくて済むようにチェックしておくと安心です。
チケットの手配をする際に同時に出入国情報を問い合わせることも出来るため利用しやすいでしょう。旅行代理店では、各国の公的機関からの情報収集だけではなく、航空会社やビザ代行会社、保険会社とも連携しているので情報量や応対にも期待できます。
海外旅行保険の付帯は海外への業務渡航において必須です。クレジットカードの自動付帯保険だけでは、補償内容に不足がある可能性もあります。国によっては入国前の付保と補償内容が指定されており、条件を満たさない場合は入国不可となります。保険会社のウェブサイトでは要件だけでなく、事例も数多く紹介され参考になります。
また、新型コロナウイルスへの補償や現地で発症した場合の応対について事前確認は必須です。
出入国情報の収集について解説しました。入国管理では厳格な申請手続きや検査が求められるため、要件を満たさなければ強制送還の対象になる可能性もあります。たったひとつの要件を見落としていたために、渡航準備にかけた時間も費用も水の泡となってしまっては元も子もありません。徹底した情報の収集に努め、帰国するまでの滞在期間中も最新の情報の把握を行ってください。
次回はビザ(査証)の取得について解説します。
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