海外出張では、休日をまたぐ滞在になることがしばしばあります。そういった場合、休日分については日当を支払う必要はあるのでしょうか。また、出張中の残業代はどのように扱えばよいでしょうか。
この記事では、出張期間中の労働時間の扱いについて解説します。
労働時間とは、従業員が上司の指揮命令下におかれた時間のことです。労働時間に該当するかどうかの判断は、従業員の行為が上司の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかどうかによって定まります。
また、労働基準法では、原則1日8時間,週40時間を法定労働時間としており、法定労働時間を超える時間外や所定休日の労働は、時間外労働として125%以上の割増賃金の支払い対象となります。さらに、法定休日に勤務した場合は、休日労働として135%以上の割増賃金の支払い対象になります。
原則として出張中の移動時間は労働時間には該当しません。
労働者からすると、出張時の移動時間は、一定拘束される部分があるため、労働時間と感じるかもしれません。しかし、移動時間中は、読書や動画鑑賞など自分の趣味の時間に充てたり、睡眠をとるなど、自由に過ごすこともできます。そのため、出張者の行為が上司の指揮命令下に置かれたものと評価されず、労働時間に該当しないとされます。
また、出張先が遠方であり、前泊のため休日に移動したとしても、出張時の移動時間に関する考え方は平日と同様の扱いとなるため、労働時間には該当しません。
ただし、移動中パソコンで仕事を進めることを上司から指示されているなどは、出張者が上司の指揮命令下に置かれていると捉えることができ、例外的に労働時間になる可能性があります。
海外出張の場合は、一週間を超える出張もよくあります。そうした場合、企業は出張者に対し、出張期間中も休日を付与する必要があります。
出張者が出張先で休日を過ごすことになっても、業務がなく自由に過ごすことができるのであれば、休日として扱っても問題ありません。そのため、出張期間の休日は、労働時間には含まれません。
出張期間中の休日は、原則、出張手当の対象範囲外となります。
なぜなら、出張手当は、出張という労働時間に対する手当ですが、休日は、上司の指揮命令下におかれた時間ではないため、労働時間とみなされないためです。ただし、休日に業務を行った場合は、出張手当が発生することもあります。
なお、出張期間中の休日に出張手当を支給するか否かは、会社の裁量の範囲ですが、出張手当を支給する場合は、税務署から業務の関連性を問われることもあるので注意が必要です。
出張中は、移動時間も多いため、まとまった作業時間が取れず、残業することもあります。そういった場合に、残業代は支払われるのでしょうか。
残業代が支給対象であるかは、みなし労働時間制の適用の有無によって分けて考える必要があります。
みなし労働時間とは、外回りの営業社員や在宅勤務者など、従業員の働いた時間が把握しにく、労働時間の算定が難しい労働に対し、実際の労働時間に関係なく、一定の労働時間の労働をしたとみなすことのできる制度です。
指揮命令者である上司との同行出張や支店での定型業務等の場合には、労働時間の算定が可能なため、みなし労働時間制は適用されません。
この場合、実際の労働時間で労務管理を行います。そのため出張中の時間外労働をしていた証拠があれば、残業代を請求することが可能です。
出張先への単独での訪問などの場合は、指揮命令者による管理が難しいため、みなし労働時間制が適用されます。
みなし労働時間制は、基本的には、時間外労働は発生せず残業代の支給はありません。ただし、事前に、出張先での業務が所定労働時間内で分かっている場合には、「通常必要とされる時間」の労働を行ったとみなすことができます。
「通常必要とされる時間」については、労使協定で定めることが可能です。例えば、「X社に出張した場合は、9時間労働したとみなす」と定めている場合は、時間外労働として1時間分の残業代が発生する可能性があります。
出張における日当や残業代は、出張者のモチベーションに大きな影響を与えるため、会社としてしっかり整備していきましょう。
日当についてもっと知りたい方はこちらをクリック