海外出張において、出張者の大きな手間となっているのが、帰国後の経費精算です。海外出張の場合は、為替の計算や渡航先のレシートのチェックなど、国内出張と比較して経費精算に係る負荷が増大します。
この記事では、海外出張における経費精算のポイントや経費精算を効率化するための方法を紹介します。
まずは海外出張において発生する経費について、渡航前と渡航中に分けて整理します。
渡航先へ向かう前に発生する費用としては以下のようなものが挙げられます。
続いて出張期間中に発生する費用は以下の通りです。
上記費用のうち、出張経費として何を認めるかは企業が定める出張旅費規程により異なります。特に支度金の有無や日当の対象範囲によって、申請内容は変わってくるため、出張者は事前に出張旅費規程を確認しましょう。
参考1:出張費の対象範囲について詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
弊社記事:出張費はどこまでが対象範囲?課税対象?出張費の基礎知識をおさらい
外部サイト:国税庁 No.5388 海外渡航費の取扱い
参考2:海外の出張規程について詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
海外出張と国内出張の最大の違いは、支払い時の通貨が異なることです。そのため、出張者は、精算時に為替レートを確認する必要があります。
為替レートは、経費使用日の通貨である必要があり、経理担当者は使用日の為替レートを検索し、日本円に換算します。為替レート換算の流れは以下の通りです。
【出張者】出張から戻ってきた社員に領収書の提出や経費の申請をしてもらう
【経理担当者】経理担当が申請された経費の内容をチェックする
【経理担当者】為替レートを検索して外貨で支払った経費を日本円に換算する
【経理担当者】日本円換算した経費を会計ソフトに打ち込む
ここで考慮すべき為替レートは3種類あります。
TTS:円を外貨に交換する際のレート
TTB:外貨→を円に交換する際のレート
TTM:上記2つの中間値
海外出張においては、出発地または目的地の空港で円を外貨に交換する方が多いと思います。その場合、使用する為替レートはTTSになりますが、外貨両替は手数料が発生します。そのため、出張者が不利にならないよう、手数料を加味したレートを設定している会社が多いです。余った外貨を日本円に戻す際は、TTBを利用しますが、その場合も同様です。
TTSまたはTTMは、日本の主要銀行のものを使用するようにしましょう。なお、どの数値を利用しているかは、事前に社内規程に定めておきます。
主要な銀行のTTSまたはTTMは、銀行のウェブサイトで確認できます。例えば、三菱UFJだと以下の通りです。
海外出張の経費精算を行う場合も、国内出張と同様に、各種の証跡が必要になります。領収書、外貨換金時のレシート(計算書)は、申請時に必要となるので、海外でも必ず入手しましょう。
また、外国ではチップの文化があります。チップは証跡が残らないケースがありますが、そのような場合に備え、いつ、何にいくら使ったかを記録しておきましょう。
出張者に対し、事前に外貨を渡しておき、帰国後に精算するという方式を取ると、為替レートの計算が不要になり、精算がスムーズに進みます。
企業側が常に外貨を保有しておくという難しさはありますが、頻繁に訪れる国であれば、非常に有効な方法です。
現地での支払いを全てクレジットカードにすると、カード会社の支払い請求時に、日本円で請求されるため、為替レートの計算が必要ありません。ただし、立替する出張者の金銭的な負担が発生するため、可能であればコーポレートカードを貸与して出張時に活用してもらう形が望ましいです。
経費精算システムを使った場合、為替レートはシステムにより自動取得されるため、出張者や経理担当者がどのレートを使用するか調べたり、思い悩む必要はありません。海外出張が多い企業は是非導入しましょう。
出張時は、国内出張・海外出張のいずれの場合でも出張後に旅費精算書を作成・提出するのが一般的です。出張精算書に記載すべき項目としては下記が挙げられます。
旅費精算書の詳細が気になる方はこちらをご覧ください。
海外出張における経費精算のポイントを解説。精算が楽になる方法も紹介。
最後に、近年はBleisure(Business+Leisure)という用語が生まれるほど、出張時の観光が注目を浴びています。とりわけ、海外出張においては期間も長く、途中で観光するケースも多々あります。ここでは海外出張期間中の観光について解説します。
参考:出張の新しい形!出張に休暇を組み合わせたブリージャーとは?
観光を兼ねた海外視察費などの扱いについて、国税庁では以下のように定めています。
『その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によりあん分し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とする』
つまり、海外渡航費用の税務上の取扱いは、原則として、業務に関連する部分は旅費、会社が負担した観光に関する部分はその従業員の給与とされます。そのため、企業は海外出張における旅行日程を業務と観光に分ける必要があります。日数の区分については、昼間の通常業務時間(約8時間)を1日として、おおむね1/4日単位で日数を割り出します。
その上で、次の計算式に基づき、業務従事割合を算出します。
業務従事割合=業務に従事した日数÷(業務に従事した日数+観光した日数)
この業務従事割合が50%以上の場合は、海外出張が業務遂行上必要であるといえるため、飛行機の往復運賃及びその他の旅行に要する費用に、業務従事割合を乗じた金額が旅費として認められます。
海外出張における精算は、国内に比べて非常に負担のかかる作業です。また、為替レートの関係で出張者にとって不利な結果になることもあるため、社内規程を整え、効率的な業務フローを構築しましょう。
■資料ダウンロード
出張支援クラウド BORDERを活用して、出張業務の効率化とコスト削減を実現しませんか?