皆様は、BTMという言葉をご存じでしょうか。BTMとはBusiness Travel Managementの略称で、出張効率化のためのシステムのことです。近年、欧米ではこのシステムの普及が進んでおり、日本においても今後普及が予想されています。
本コラムでは、BTMの特徴や導入プロセスに関してシリーズ化しお届けします。今回は、BTMの概要及び歴史について解説します。
ビジネストラベルマネジメントとは出張に関わるさまざまな業務の効率化や最適化を図る活動のことです。その活動をシステム化したBTMは、航空券やホテルの手配を一括で行うことができ、それらのデータを一元的に管理できる点が特徴です。加えて、出張申請・承認、経費申請、安全管理など、出張に係る周辺業務についてもシステム上でカバーされており、企業の出張に関わるコストカット、課題のソリューションとして期待されています。
航空業界が予約システムの開発を始めたのは1950年代と言われています。そして、アメリカでSABREが1964年にCSR(Computer Reservation System)として開発されました。これにより、システム上での予約が可能となりました。今では当たり前となっている宿泊施設の予約システムに関しては更に遅く、業界最大手のExpedia社が設立されたのは1996年です。
出張の効率化に最初に着目したのは米国でした。米国では、1990年代前半から大手企業を中心に、BTMによって出張者の利用状況(利用した航空会社や料金等)を可視化し、出張経費の削減に取り組みました。また、BTMが対応する領域は、直接経費だけでなく、業務改善による間接コストの削減も対象となりました。BTMが日本で活用され始めたのは、1990年代後半~2000年初頭です。日本経済が低迷する中、企業において経費削減が求められ、BTMへの関心が高まりました。
1990年代に開発された初期のBTMは、導入企業の基幹システムとの手動での連携や利用するPCへのインストールを必要とするため、膨大な初期コストを要しました。そのため、BTMを利用したのは、導入に見合うコスト削減が可能になるグローバル企業が中心でした。
こうした流れを変えたのは、SaaS(Software as a Service)の台頭です。SaaSとはサービス提供企業が提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット経由してユーザーが利用できるサービスです。SaaSの到来により、企業は初期コストを最小限にしたまま、必要な機能を必要なだけ利用することが可能になりました。BTMにおいてもSaaSの仕組みが導入されたことにより、大企業だけなく、中小規模の事業者の利用が可能となりました。実際に、欧米では、クラウドBTMの普及が急速に進んでいます。
日本企業においてBTMがなかなか浸透しなかった背景には導入コストと出張費削減コストが見合わないという点が大きかったと思いますが、クラウドBTMの到来により、企業の規模感問わず、コスト削減や出張業務の効率化が期待できます。
次回は、BTMの特徴や導入メリット、導入によって出張手配がどう変わるかについて解説します。
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